中学受験カウンセラー・安浪京子さんと考える子どもの受験、親はどう向き合う? 【後編】
「くらしのリサーチ、頼れる味方」では、子育て世代の ”知りたい” に答えるさまざまなトピックをご紹介。その分野にまつわる専門家と、Yohanaのスペシャリストとの対談を通じて、くらしに役立つヒントをお届けします。
今回のテーマは「中学受験への親の向き合い方」。数年に渡る長期戦になる中学受験、子どもだけでなく親が息切れせず乗り切るには? 後編では、
受験に向けてのスケジュール管理、最後まで息切れせず乗り切るための心構えなどについてお話しします。( ▶【前編】は こちら へ)
くらしはどうやって変えていく?
野村:
受験に向けて、くらしの見直しも必要ですね。1週間の学習スケジュールを立てるお手伝いもしていますが、やはり自宅での勉強時間の確保に難しさを感じているお客さまは多いです。
ポイント① 「宿題時間」の確保が第一。大人が正確なスケジュールを立てて
安浪:
まず第一に考えるべきは、塾の宿題に取り組む時間の捻出ですね。進学塾の宿題の量は、学校の10倍以上。どう終わらせるかが鍵になります。
野村:
以前お客さまにおすすめしたのは、子ども向け、大人向けそれぞれのスケジュール管理ノートです。スケジュールを書く欄だけでなく、1週間の目標やTo-doを書く欄などフォーマットができているので、書き込むことで頭の中も整理されます。
安浪さんもスケジュール管理にまつわる著書を出されていますが、スケジュールを立てる上で大人が意識すべきはどんなところでしょうか?
安浪:
基本的には子ども任せにせず、大人がスケジュールを立てる上で必要な内容を把握することです。勉強のスケジュールは、目標ではなく具体的な計画。「ざっくり」ではなく、子どもの能力やスピードを理解した上で適切に決めてあげる必要があります。
ひとつの課題を終わらせるのにどのくらい時間がかかるかを把握し、勉強のペースを判断した上で時間割に落とし込んであげることで、無理のないスケジュールが立てられます。
ポイント② 1日のスケジュールには、必ず「余白」を作る
それから大切なのは、1日の中に必ず余白時間を作ること。余白とは、勉強をしない時間のことです。
長年いろいろなご家庭を指導してきて、成果を上げる子の日常には必ず余白があることを実感しました。食べ物だって過度に胃に詰め込んではなかなか消化が進まないように、学習も同じ。すきまなく情報を詰め込んでは、脳が消化できなくなってしまうのです。
あえてぼーっとする時間、何もしない時間をとった方が効率的に勉強ができるということは、大人が意識しておけるといいですね。
野村:
スケジュール管理に加えて、子どもの勉強モチベーションを上げるきっかけのひとつとして、日々の勉強時間、科目、使った教材やその成果を記録できて、勉強量がグラフで見える化されるアプリなどもおすすめしています。
ポイント③ ゲームやスマホの習慣は、段階的に見直して
野村:
ゲームやスマホを触る時間は、受験勉強とどう折り合いをつけるべきでしょうか? 悩んでいるお客さまが大変多いと感じています。
安浪:
ある日からいきなり「だめ!」と禁止するのでは、子どもも納得できず、不満が芽生えます。
うまくいっていたご家庭は「受験の何ヶ月前からはお休みにしよう」など、前もって子どもに伝えた上で、それまでは楽しませてあげていました。長期的な心づもりをさせておくと、子どもも冷静に受け入れやくなります。
野村:
そのほかにくらしの面で親にできることは食事のサポートでしょうか。受験前1週間の献立を考えるなど、忙しいお客さまに代わり、私たちがメニュー決めのお手伝いや食材の手配を行うこともあります。
献立をご提案する上で活用するのは、受験生向けのレシピが載ったレシピサイト。たとえば味の素が運営する『AJINOMOTO PARK』では、受験生応援のための『勝ち飯®️』という特集サイトを展開しています。
脳が働くエネルギーになる栄養素や、体調管理につながる栄養素をを含む食材をバランスよく取り入れた献立が、受験準備期と本番期に分けて紹介されています。
安浪:
おいしいごはんを作ってあげることは、大人ができる大事なサポートですね。受験向けのメニューを作ることももちろん大切ですが、受験直前の頑張りどきには、何より子どもの好物を作ってあげてほしいと思います。
子どもも大人も、疲弊してしまわないために
野村:
お話を伺って改めて感じたのは、中学受験には保護者の関わりが想像以上に大切なのだということです。
私たちにできることは、大人が受験のサポートに時間を割けるよう、その他の家事をお手伝いすることかもしれません。日々の買い物や献立決めを頼っていただくなど、くらしの負担を減らすことで、親子が一緒に受験に向き合える環境作りを支えていきたいと感じました。
安浪:
大人は関われば関わるほど、思い通りにいかずイライラしてしまうこともあるかもしれません。
ただその中で、保護者は「0か1で考えない」ことが大切だと思っています。たとえば毎日10ページ分の問題を解くことを子どもに課して、それができなければ「だめ」とはせず、コンディションに合わせてやり方を柔軟に考えていく。子どものやる気だって常に0か1ではなく、日々グラデーションのように移り変わります。今日の気持ちに寄り添いながら、共に歩んでいけるといいですね。
受験のゴールは合格ではない。「やってよかった」と思えるために
野村:
合格だけがゴールではないと、大人は皆、頭では理解していると思うんです。ただやはり受験が近づくにつれ、つい前のめりになってしまう。頑張ってきた結果を出したいと思うあまり、子どもに負荷をかけてしまいがちです。
どのような結果であれ「やってよかった」と思えるために、どんな心持ちでいられればいいのでしょうか。
安浪:
大人は「今」だけにとらわれない視点をもつことが大事です。
中学受験を何のためにするのか? 子どもの未来のためですよね。そう考えると合格はゴールではなくて、通過点にすぎません。
志望校にご縁を頂けても、頂けなくても、大切なのはそれから先の過ごし方。目の前だけでなく、少なくとも数年先など、少し引いた視点でその子の人生を想像すると、選択肢はひとつではないと思えて、肩の力が抜けるのではないでしょうか。
私の息子はいま中学1年生なのですが、実は中学受験の途中で高校受験に切り替え、塾をやめました。6年生になってから、中学受験そのものへの気持ちが離れてきているなと感じて、このまま無理に続けていくよりは、やめた方が本人にとっても幸せだろうと思ったんです。
結果、彼自身今は進学先の環境を楽しみ、小学生の頃よりはるかに主体的に勉強に取り組んでいます。私も夫も途中で中学受験から降りたことに全く後悔はありません。ただ、受験をしようと頑張ってきた2年間にも後悔はない。時間が巻き戻せても、またわが家は受験の道を選び、同じ学習環境を用意すると思います。課題に挑み、自分で物事を考えて、トライアンドエラーし、喜びや悔しさを知ったこと。それは長い人生の中で、彼にとって価値のある経験だったと思うからです。もちろん、学力も身につきましたしね。
野村:
あきらめるという決断も時には大切ですね。その時、安浪さんはどんな風に声をかけたのでしょうか?
安浪:
親がいきなり一方的に「やめる」と伝えたら、そこまで頑張ってきた子どもは見捨てられたような気持ちになると思うんです。大切なのは、さまざまな選択肢を用意して、本人に選ばせること。続けるかやめるか、続けるならばどのように続けていくのか、やめるならば塾はやめるけれど、どのように学びを続けていくのか、どのような生活を送っていくのか。家族で色々なケースを話し合い、最終的に本人が決めました。
野村:
もしも落ちてしまった場合の声かけについても悩む方は多いと思います。安浪さんならどう声をかけますか?
安浪:
たとえば第4志望の高校に決まったら、「実はこの学校が一番いいと思っていたんだ」と伝えます。どんな結果であれ肯定してあげることで、たとえ本人がショックを受けていたとしても、それが「失敗」ではないのだと思える。子どもにとっての受験も、「やってよかった」と思えるものとして残るはずです。
ただ、そうした声かけをできるようにするためには、親の心にも余白が必要です。受験の主役は子どもですが、だからといって大人は自分を犠牲にしてはいけません。伴走しながらも、自分の好きなことをする時間、息抜きの楽しみも忘れないでください。自分の人生を生きるのも、大切なことです。
中学受験は一度きりです。渦中は厳しいことがあっても、数年後に、やってよかったねと親子で振り返ることができる。そんな特別な経験になることを願っています。
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