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「コミュニケーションを欠かさず子育ても、頼ることにも柔軟に」 国山ハセンさん

TBSテレビのアナウンサーとして、「news23」や「Nスタ」などさまざまな番組で活躍したのち、2023年からはビジネス映像メディア「PIVOT」のプロデューサーに転身した国山ハセンさん。新たなフィールドでの挑戦を始めた傍ら、2歳の息子さんの子育てにも同様に力を注いでいます。夫婦間のコミュニケーションを大切にしながら、心地よいくらしのあり方を柔軟に追い求める国山さんを訪ねました。

「あの人の気持ちよい生き方」は、子育てや家事、仕事などに忙しい日々の中で、思い思いの方法で頼り、支え合い、豊かに生きる方々を紹介する連載企画です。


夫婦間で話し合うことで
互いにとって気持ちのよい子育てを。

「PIVOT」のプロデューサーとして、日々自社の番組出演や企画制作に携わる国山ハセンさん。週に2、3日はオフィスで会議や撮影をこなし、それ以外は、自宅近くのカフェやコワーキングスペースでデスクワークをしたり、ときには他メディアの番組出演のためにテレビ局などへ赴くのがおおよそのスタイルだといいます。その働き方同様、家事や子育てへの関わり方もフレキシブル。「お互いが得意なことを率先してする」のが国山夫妻の流儀です。

「妻は料理が好きだったり、洗濯物のたたみ方にこだわりがあったりするので、得意分野は彼女に任せて、私はそれ以外の家事を能動的に担うようにしています。例えば、食器を洗ったり、朝に子どもを着替えさせたり、ゴミを出したり。日々の細かいことは、気づいたことを気づいたときに、気づいたほうがやるようにしています」

こうしたスタイルでも、夫婦のどちらかに過度に負担が偏ることがないのは、密なコミュニケーションが根底にあるから。「まだ完璧ではないんですよ」と謙遜する国山さんですが、課題があればその都度共有し、解決策を話し合うことで、お互いが心身ともにすこやかでいられる方法を模索してきました。例えば、土日のどちらか1日を、国山さんが息子さんと2人で過ごすようになったことも、夫婦の対話の中から生まれたアイデアでした。

「平日、私は基本的に仕事で外出していて、家族と離れて過ごす時間があるし、外で食事をする機会もある。自分が当たり前にしていることも、専業主婦として子育てに注力する妻にとっては難しいことなんですよね。自分の時間を持てることがすごく息抜きになるんだと妻が正直に伝えてくれて。だったら週末に、私が1日息子と過ごして、寝かしつけまでする日を設けるのはどうかと提案しました」

ほかにも、流動的なワークスタイルゆえに「スケジュールを早めに共有するようにしている」とも。週によって仕事が立て込むことや、海外出張に出かけることもあるからこそ、前もって伝えておくことで、準備をしたり、ときには家族の手を借りるなどの解決策も選び取ることができるもの。試行錯誤を繰り返す中で、互いが気持ちよく過ごせるあり方を、夫婦で少しずつかたちづくってきました。

育児休暇が、生き方や考え方を転換する
一つのターニングポイントに。

TBSテレビのアナウンサーとして忙しい日々を送っていた中、お子さんが生まれたのは2022年のこと。「報道番組で男性の育休というテーマを扱う機会も多く、漠然と自分もいずれは取得したいなと考えていた」という国山さん。息子さんが生後3ヵ月を迎え、里帰り出産を経て自宅での3人暮らしが始まった頃に、3週間の育児休暇を取得しました。それが、現在の働き方や考え方につながるターニングポイントとなったそうです。

育休期間は子育てに注力して、ミルクの作り方や、夜泣きにはどう対応するか、散歩はどんなふうにするかなど、夫婦二人三脚で育児のスキルセットをしていきました。と同時に、これから家族でどんな生活を送っていくか、どんなふうに子育てをしていこうかなどを、妻ともたくさん話すことができましたし、転職することになったPIVOTの人たちと出会ったのもこの期間。広い意味でこれからの人生を見つめ直すきっかけをたくさんもらいました

育休を経て、パートナーに対して「言いたいことをお互いに素直に伝えられるようになった」と国山さん。夫婦間のコミュニケーションにおいてもポジティブな変化が生まれたといいます。

「妻は専業主婦で、自分が家庭の外に出て働いていることもあり、以前はどうしても家族の意思決定権は自分が持っているような感覚に陥り、不均衡なパワーバランスになっていたんですよね。でも休暇期間に相手とじっくり向き合ったことで、家族のことは2人で話し合って決めていくべきだと考えを改めることができました」とのこと。以来喧嘩をすることはあっても、互いへのリスペクトを忘れないことを心がけているのだそうです。

子育てをシェアする輪を広げ、
積極的に頼るということ。

育休やその後の子育てを経て実感したのは、「パートナーを孤立させないこと」の大切さ。自ら子どもと相対する中で気づいた難しさや、ワンオペ育児の大変さを痛感する中では、困りごとを共有できるようなコミュニティの輪を広げることにもトライしてきました。

「特に妻のような専業主婦ほど、家庭の外にコミュニティがない分孤独を感じやすい。少しでも悩みをシェアできるようなママ友やパパ友ができたらいいなと試行錯誤しました。例えば、息子を連れてアスレチックジムの習い事に通ってみたのもそのひとつ。結果的には合わなくて辞めてしまいましたが、近所にどんな子育て家族が住んでいるのかを知ることができただけでも学びがありました」

公園で子どもを遊ばせている方にも積極的に話かけてみたり、仕事で知り合った子育て中の人と積極的に情報共有をしたりなど、細かな交流を積み上げていくほか、大変なときには無理することなく、ベビーシッターに頼るという選択も取り入れたといいます。

「当初は贅沢なんじゃないかという思いや、子育てへの責任感から、サービスに頼ることに抵抗がなかったわけではないんですが、日々の大変さに直面し、楽しいくらしを送っていくためには、頼れるものは頼るべきだなと実感して。自分から妻に提案してシッターさんにきてもらうようにしました。息子が保育園に入る前までは、週に1回きてもらって、だいぶ楽になりましたね」

頼れるサービスは積極的に活用する――。このマインドセットにより、日々の負担軽減のみならず、「夫婦の時間が取れるようになった」とも。ときには2人で外食に行ったり、ゆっくりした時間を過ごすことが、さらなる密なコミュニケーションを育み、結果的にすこやかなくらしの循環を生み出しています。

仕事と子育てを両立させる
父親たちのロールモデルに。

アナウンサーからの転職以来、「以前に比べて自分の意志でスケジュールをマネジメントできるようになった」という国山さん。家族と過ごす時間が物理的に増え、フレキシブルに時間を捻出できるようになったことも、嬉しい変化だったといいます。

「当たり前のことかもしれませんが、これからは家族で旅行に行ったり、キャンプに行ったり、積極的に一緒のアクティビティを楽しんで、思い出をたくさん作っていきたいなと思っています。息子は2歳で小さいですが、早く一緒にサッカーがしたいなと(笑)。これからの成長がすごく楽しみですね」

育児休暇を取得したことを皮切りに、絶えず夫婦で価値観を擦り合わせながら、二人三脚で子育てに向き合う国山さん。一方で広く社会に目を向けると、男性の育児参加については、世代やコミュニティによって価値観の差も大きいトピックだが「どんなふうに子育てと向き合って、日々どんな工夫をしているかを、もっと男性たちがシェアするようになれば」とのこと。こう続けてくれました。

「例えば育児休暇もそのひとつ。まだ一般的とは言えないまでも、徐々に制度の活用が広がりつつある中で、実際に取得した人が自分の経験をシェアすることで、より意識する人が増えるんじゃないかなと思っています。もちろん私自身もその責務を持つ一人ですし、メディアの仕事に携わるうえではなおさら。子育てと仕事を両立させる男性たちのロールモデルになれるように、積極的に経験を発信していきたいですね」

家族とのコミュニケーションを大切に、広い視野で社会にアンテナを張り、その都度最適な方法を柔軟に選び取っていく。これからの時代の家族像や父親像を体現する国山さんのくらし方は、今後も多くの人々に影響を与えることでしょう。


【PROFILE】
国山ハセン
くにやま・はせん/1991年東京都生まれ。大学卒業後、TBSテレビにてアナウンサーとして活躍。「news23」「Nスタ」「アッコにおまかせ」など、報道番組からスポーツ、情報、バラエティ番組まで幅広く担当する。2023年1月からは、ビジネス映像メディア「PIVOT」にプロデューサーとして参画。番組出演やコンテンツの企画制作において活躍中。

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