「気持ちよく"頼り合える"方法を探して、子育てを楽しく分かち合う」福田麻琴さん
『LEE』『VERY』などのファッション誌やウェブ、広告など幅広く手がけている人気スタイリストの福田麻琴さん。34歳で出産し、現在11歳の息子さんを育てる母でもあります。仕事柄、どうしてもスケジュールが不規則になりがち……という中でも、家族同士が"頼りやすく、頼られやすい"フェアな関係性を築くことで、子どもとの時間を大切にすることができたそうです。臨機応変に考え方を変えながら、ポジティブに育児と家事を楽しむ福田さんにお話を伺いました。
「あの人の気持ちよい生き方」は、子育てや家事、仕事などに忙しい日々の中で、思い思いの方法で頼り、支え合い、豊かに生きる方々を紹介する連載企画です。
子育てで大切にしているのは、一緒に過ごし、心を通わせる時間
『VERY』や『LEE』などの人気女性誌を中心に、広告やCMのファッションスタイリングを手がける福田麻琴さん。フランス留学を経て身につけたフレンチテイストに絶妙な"抜け感"を加えたスタイルで、幅広い世代から支持を得ています。息子さんを出産したのは34歳の頃。現在11歳の息子さんは小学6年生となり、だんだん手がかからなくなってきたといいますが、それでも出産当時と変わらず続けているのが「少しでも時間があれば、一緒に時間を過ごすこと」だそうです。
「出産した34歳の頃は、徐々に大きな仕事を任せてもらえて、働くのが楽しくてしょうがないという時期でした。夜遅くから打ち合わせをして、そのまま飲みに行って、翌朝から撮影なんてこともよくあって、そんな忙しい生活が好きだったんです。思いがけない妊娠ということもあって、以前のくらしから離れてしまう寂しさは感じていました」
「そんな気持ちに変化をくれたのが、出産後しばらくしてから始めた、息子とのお散歩でした。
息子をベビーカーに乗せて近所の公園を歩いたり、芝生の上に寝転んだり。そのままデパートのショーウィンドウを見て回ってチェックして(笑)。仕事に復帰するまでの3ヶ月間は2日に1回くらいは行ってましたね。息子は覚えていないかもしれませんが、私にとって、一緒に出かけるということが息子とのつながりのように感じられました。成長して、1人でできることが増えてくると、そんな時間も減ってきます。だからこそ今も散歩をしたり、外に出られない時でも一緒にゲームをしたりして、2人で過ごす時間を大切にしています」
多忙な平日も隙間時間に息子さんと一緒に過ごすよう心がけているとか。その1つが朝、一緒に小学生新聞を読むこと。お互いに意見を言い合う中で、今どんなことに関心があるのかがわかるそう。ほかにも洋服や靴をシェアしたりして、「心も一緒にいられる」工夫を続けてきました。
試行錯誤の末に編み出した、みんなが気持ちいい育児の分担
とてもいい親子関係を築いてきているように見える福田さん。でも、その道のりは平坦ではありませんでした。一番苦戦したのは仕事と育児の両立。産後3か月で仕事に復帰すると、家事育児にどうしても手が回らない場面が出てきて頭を抱えることに……。そこでまず取り組んだのが、夫との分担。会社経営をしている夫は自分と同じく仕事の時間が不規則で、最初は喧嘩が絶えなかったそうです。そんな時、いつも心に留めていたのが、「別の人間なんだから、意見が違って当たり前」ということでした。
「自分と夫、半分ずつ違う意見や主張があって、なかなかまとまらない。でも、その違いをポジティブに考えたら、お互いの得意を活かせるんじゃないかって。たとえば夫は習い事や学校の準備をしたりするのは苦手なようで、子どもに関しては私が全般を担当しています。その分、夫は掃除や洗濯などの家事を"母の仕事"と決めつけることなく、臨機応変にやってくれています。得意かどうかわかりませんが(笑)そうしてスムーズに育児と家事をシェアできるようになりました。」
「もう1つ大きな支えとなったのが、実の母と夫の母。ふたりともそう遠くない場所に住んでいたこともあって、新生児の頃から積極的に育児や家事をサポートしてくれたそうです。けれど徐々に二人の母に頼るウェイトが大きくなり、助けてもらうことに申し訳なさを感じるように。その背景には『身内だからこその頼りづらさ』がありました」
「実母はそれまでしていた仕事を辞めてサポートしてくれて、義理の母も土日や早朝に手伝いにきてくれる。それがなんだか悪いなと感じてしまって。かと思えば、自分がすごく忙しいときには『やってもらって当たり前』のように振る舞ってしまったり。これだとお互いにとってよくないし、何よりフェアじゃない。どうしたらみんなが気持ちよく過ごせるか考えた結果、その着地点が、謝礼を渡すことでした。身内にお金を払うの? と思われるかもしれませんが、家族といえどもそれぞれの人生があります。その大切な時間を使ってもらっているわけですから、謝礼があって当然ですし、私も頼みやすい。今では『土日だから1.5倍ね(笑)』なんて、実母は笑って言ってくれるようになって、お互い気持ちよく、頼み/頼まれることができるようになりました」
ライフスタイルの変化をポジティブに受け入れられたことが
ターニングポイントに
働きながら育児をするのは、どんな仕事であれ大変なこと。けれど、福田さんは「それ以上に大切なものをもらった」と振り返ります。それは「生き方や考え方の大変化」だったそう。それまで夜型だった生活が一転、子どもと一緒に朝型の生活にシフトすると、「朝ってこんなに素敵だったんだ……」と感激。仕事は夕方までに切り上げて、家でゆっくりと夜の時間を過ごす楽しみも知りました。
「出産直後は生活リズムの変化に戸惑いましたが、変わってしまったものはしょうがない、それをポジティブに楽しんでみようと思ったのがターニングポイントになりました。当時は仕事仲間の中にも子どもを持つ人が増えた時期で、子ども同伴で仕事現場に来るなんていう、それまでは考えられなかったことが許容されるムードが生まれつつありました。ときにはちょっと微妙な空気になって、『失敗した! この現場は違った……』と反省することもありましたが、ウェルカムな現場を経験することで、こんなやり方もあるんだ、試してみないとわからない! と思うようになりました」
そんな気持ちの変化を「いい意味で図々しくなれた」と表現する福田さん。それまでタブーだと思い込んでいたことも、みんなで試して話し合っていけば変えていけるのでは? そうやって子育てしやすい社会を作っていくことも大切だと言います。
「たとえばファッションも同じで、母親が真っ赤なリップを塗るのはどうなのとか、ハイヒールなんて履いちゃダメだよね……とか。私も最初は勝手に思い込んでいたのですが、それって寂しいし、つまらない。シーンを選べばお母さんだって自由なファッションをしたっていいし、自分の人生を楽しんでいいんだって、思えるようになってきました」
「母だから我慢が当たり前」から自由になれた言葉
母となっても自分らしく生きること。福田さんにそれを教えてくれたのは、ファッション業界の憧れの大先輩の言葉でした。フランス留学経験のある福田さん。帰国して、結婚、出産を経験し、仕事に復帰してから間も無く、憧れのファッションデザイナーであるアニエス・ベーさんにインタビューする機会がありました。同じく母でありながら常に第一線で活躍し続ける彼女に、当時福田さんは「子どもを持ちながら仕事でも輝くには、何が大切か」と問いを投げかけました。
「『日本の女性は奥ゆかしいけれど、我慢をしすぎている。できないことなんて、何もないのよ』と彼女は言いました。女だから、母親だから我慢しなくちゃいけない。出産直後、そんなふうに感じていた私にとって、その言葉は大きな気づきをくれました。私もこれから母になる人に同じように言ってあげたいですし、ファッションでもそんな表現をしていけたらと思っているんです」
今、福田さんが夢見ているのは、息子さんと一緒に海外留学をすること。今度は「仕事があるんだから」という呪縛を振りほどき、新しい世界の扉を開けることにワクワクと胸を躍らせています。
「自分が行ってみたいという気持ちはもちろんあります。でも、一番はこれから自分のもとを巣立っていく息子に、私ができる最後のことかなと思っている部分が大きいですね。今は目下、留学の情報収集ですが、その部分でも誰かに頼って、一番いい選択ができたらなと思っています」
仕事と育児の両立を経て、自分らしい生き方を見つけた福田さん。「こうでなくちゃいけない」を疑い、体当たりで新しい道を模索してきたそのポジティブなパワーは、柔軟で、みんなが楽しく参加できる子育ては工夫次第で見つけられる、そんな勇気を与えてくれます。
【PROFILE】
福田麻琴
ふくだ・まこと/スタイリスト。1978年生まれ。『LEE』『VERY』『mi-mollet』など女性誌のスタイリングを中心に、広告などで活躍。エッセイの執筆やブランドのディレクション、コラボ商品開発なども行う。著書に『MY BASIC,MY ICONS 10年後も着たい服』(イースト・プレス)『私たちに「今」似合う服〜新しいベーシックスタイルの見つけ方』(大和書房)など。インスタグラム:@makoto087
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