「仕事も子育ても、夫婦で対等に、柔軟に、手を携える」 料理家ユニット ぐっち夫婦
美味しく簡単、栄養満点の家庭料理レシピで、共働きの子育て世代を中心に幅広い支持を集めている料理家ユニットのぐっち夫婦。レシピ開発やSNS等での情報発信、メディア出演、ドラマの料理監修など多彩な仕事に取り組みながら、1歳の息子さんの子育てにも力を注いでいます。私生活においても仕事においてもパートナーとして手を取り合うのが、夫のTatsuyaさんと妻のSHINOさん。家族が健やかでいられるくらし方を追求する2人を訪ねました。
「あの人の気持ちよい生き方」は、子育てや家事、仕事などに忙しい日々の中で、思い思いの方法で頼り、支え合い、豊かに生きる方々を紹介する連載企画です。
夫婦2人ともが、同じことを、
同じようにできるような状態に
緑豊かな閑静な住宅街に住まい兼仕事場を構えるぐっち夫婦。2023年7月に生まれた息子さんと共に日々を送っています。家事や育児に関しては、「明確な役割分担を決めているわけではない」と2人。自然と習慣化していることはあれど、その日のスケジュールに応じて、"できる方が、できる時に、できることをやる"というのが夫婦の流儀です。
「僕たちの仕事は、日によってスケジュールがさまざま。家だけで完結する日もあれば、撮影や取材で遠方に行くこともあるし、打ち合わせでクライアント先に出向くこともある。さらにそれぞれ別のプロジェクトを受け持ってもいるので、別行動も多いんです。なのでGoogleカレンダーに全ての予定を書き込んで共有し、お互いの行動を見える化しています。送り迎えや買い物はもちろん、突発的に子どもが体調を崩した時の対応も、夫婦間で連絡を取り合いながらその都度、動ける方が動く形でやりくりしていますね」(Tatsuyaさん)
どちらかが息子さんを保育園に連れていっている間にオンライン上で連絡帳を記入、提出したり、どちらかが迎えに行く間に夕飯やお風呂の支度をしたり。あるいは、薬を飲ませるなどイレギュラーなタスクが発生した時は、マニュアル化して共有する。連携プレーで効率良く毎日をこなす2人ですが、お子さんが生まれて間もない頃は、困難を感じることも多々あったのだそう。「子ども中心の生活リズムにガラッと変わったので、順応するまでは大変でしたね」とTatsuyaさん。続けてSHINOさんは「授乳のように"ママしかできない"ことがあるのが苦しかった」と振り返ります。
「もちろん授乳はやむを得ないことですが、絶対に自分にしかできないタスクを抱えることが、いかにプレッシャーになるかを痛感したんです。そんな教訓もあり、家事や育児に関しては夫婦2人ともが同じことを同じようにできるようにして、フォローしあえる状態を作りたいと考えるようになりました」(SHINOさん)
頼り合える関係性のために、
それぞれの時間を尊重する
壁にぶつかった時は決まって、会話をすることで解決策を探ってきたぐっち夫婦。これまでにも引っ越しや妊娠、大きな仕事などによる変化を乗り越えてきたそうですが、Tatsuyaさんいわく、「子どもが生まれてからは、SHINOがよりしっかりと自分の意見を言ってくれるようになった」とのこと。対するSHINOさんは、「自分一人で抱えては、どうにも回らないので」と笑います。
「とはいえ、『これやって』『あれやって』と一方的に主張するのではなく、相手の様子を見ながら声をかけ合うことは大切にしていますね。お互いが今どんなことに忙しいかが分かるのは、一緒に仕事をしている醍醐味です。あくまでも自分ができる限りのことをこなした上で、相手へのリスペクトを持ってお願いするようにしています」(SHINOさん)
また、夫婦が快く頼り合える関係性を保つ上では、それぞれのプライベート時間を尊重しているとも。「お互いが余暇としてやりたいことが出てきた時に、快く送り出してあげることも大切なのかな」とSHINOさん。
これにはTatsuyaさんも「ストレスを溜めないためにもお互いの時間は大事ですよね」と頷きます。仕事の予定と同様に私用もGoogleカレンダーに書き入れ、できるだけ早めに共有。それぞれのやりたいことをできる限り叶えられる体制を心がけているのだといいます。
そして、こうした束の間の余暇の時間は、時に、子育てにまつわる情報交換の機会になることもあるそうです。
「先日も前職の同期たちと飲みに行く機会を持つことができたんですが、みんな同年代で、同じくらいか少し上の子どもがいる人たちなので、自然と話題が子育てのことになるんですよね。何時くらいに寝かしつけているか、休日に子どもを遊びに連れて行ってよかった場所はどこか、外食はどこに連れて行っているかなど、友人たちからいろんな情報を持ち帰ることができるいい機会になっています」(Tatsuyaさん)
離乳食に試行錯誤する経験をシェアし、
世のママやパパの背中を押したい
お子さんが生まれたことは、料理家夫婦の普段の料理の仕方にも変化をもたらしました。特に新たに習慣づいたというのが、食材の切り置きや作り置き。時間がある時に、エノキを多く切っておいて翌日の汁物や炒め物に備えたり、ブロッコリーを茹でておいていつでも食べられるようにしたり。さらにお子さん用に素材冷凍も積極的に行うようになったといいます。
「鮭を茹でておいたり、鶏団子を作ったりしておいて、小分けにして冷凍保存するようにしています。そのストックがあれば、簡単におかずやスープにできるし、タンパク質もしっかり食べさせられる。一歩先のことを考えて料理をするようになりましたね」(SHINOさん)
一方で、世のパパやママたちと同様に苦戦したというのが、離乳食作り。Tatsuyaさんによれば「離乳食は僕らが今までやってきた料理とは全くの別ジャンル」。当初はお子さんが思うように食べてくれず、食材の選び方、調理の仕方などで試行錯誤を繰り返したそう。一歩間違えると子どもを危険に晒してしまう可能性があるため、正しい知識が必要なものですが、「あまりまとまった情報がないし、SNSで流通している情報も何を信じればいいのか分からなかった」とSHINOさん。信頼に足る情報を得ることにも苦労したといいます。
こんなふうに悩みながら離乳食作りに向き合う経験を、同じように悩む子育て世代にもシェアしたい。そんな思いから2人は、離乳食や幼児食にまつわるWEBサイト「はらぺこベビー」を立ち上げました。管理栄養士や医師、保育士などの監修のもと、離乳食レシピや食材の下ごしらえ方法、コラム記事などを発信しています。
「正直離乳食や幼児食って、美味しくできたから食べてくれるというものでもないんですよね。料理を仕事にする僕らだって悩むんだから、みんな苦戦して当たり前。一食一食に丁寧になりすぎず1日単位で帳尻を合わせればいいくらいの心持ちで、無理せず、気負わずに向き合ってもらいたいなと。『はらぺこベビー』を通じて、そんなメッセージを伝えられたらと思っています」(Tatsuyaさん)
自分の時間をゼロ円換算しないことで、
頼ることがグッと身近に
生真面目にも、神経質にもなりすぎないこと。彼らが提案する料理レシピにも通じる気楽さこそが、家事や子育て、そしてくらしにおいても2人のスタイル。ゆえに、"頼れるものには積極的に頼る"をモットーに、手が回らない部分は、民間のサービスの力も借りているのだといいます。
「5年ほど前から週に1回、あるいは2週に1回のペースで、家事代行サービスを利用しています。例えば僕は洗濯をする時、洗濯機を回して干すまでは好きなんですが、畳むのがどうしても苦痛で。そうした苦手な部分を中心にお願いしています」とTatsuyaさん。
こうして家事を部分的にアウトソーシングしているからこそ、「心穏やかに過ごすことができています」とSHINOさんも続けます。とはいえ、家事代行やベビーシッターなどの民間のサービスに頼ることに対して、まだ"贅沢している"感覚になって尻込みする人も少なくないのが世間の実情。Tatsuyaさんは発想を変えてみるのも一つの手だと思う、と話します。
「頼るハードルが高いのは、家事や育児に対して"自分でやればお金がかからないものだ"という意識があるからだと思うんですよね。でも僕らは、自分の時間を仕事の時給で換算するようにして考えています。それと料金を見比べてみて、ある意味等価交換をするような感覚と範囲で家事代行を使っていて。その分子どもと遊びに行けたり、リラックスできたり、自分の仕事を片付けられたりもする。自分の時間をゼロ円換算しないようにすると、見え方も変わるかもしれませんね」(Tatsuyaさん)
息子さんがもう少し大きくなったら、家族でキャンプに行くのが夫婦の夢だそう。「僕たちがもともとキャンプ好きだというのはもちろん、自然に触れることで、いろんな経験をして、時にはちょっとした怪我をして『これって痛いんだ』と学びながら成長していってほしいですね。僕自身もそんなふうに育てられたので」とTatsuyaさん。
壁にぶつかるたび、話し合いながら解決策を手繰り寄せ、家族が気持ちよく過ごすことのできる方法を模索する2人。SNSなどを通じてシェアされる彼らのレシピも、暮らしぶりも、同じように共働きで子育てに向き合う夫婦の心をふっと軽くしてくれることでしょう。
【PROFILE】
ぐっち夫婦
ぐっちふうふ/飲食店を経て独立した夫Tatsuyaと、栄養士の資格を持つ妻SHINOからなる料理家ユニット。ホームページ「ぐっち夫婦の今日なに食べよう?」やYouTube、Instagramなどで、気軽に作れて栄養バランスにも気を遣ったおいしいレシピを発信している。レシピ開発・提案のほか、SNSやWEBサイトの制作、運用支援も。離乳食レシピを発信するサイト「はらぺこベビー」も人気。
子育てや家事に日々忙しい生活を送るあなたに、
新しい「頼り方」の選択を。
▶︎Yohanaの最新情報や、くらしのTo-do(タスク)を解決する方法は Yohana Instagram へ。
▶︎Yohanaにはどんなことを頼れるの? 詳しくはこちらの記事(こんなとき、Yohanaに頼って! 【基本編】)へ。
▶︎Yohanaをはじめる。詳しくはこちらへ。