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「探究学舎」宝槻泰伸さんと考える子どもの "学ぶ力" を引き出す体験

「くらしのリサーチ、頼れる味方」では、子育て世代の "しりたい" に答えるさまざまなトピックをご紹介。その分野にまつわる専門家と、Yohanaのスペシャリストとの対談を通じて、くらしに役立つヒントをお届けします。

今回のテーマは「子どもの学ぶ力を引き出す体験」。"知的好奇心に火をつける教室" として全国から子どもたちが集う「探究学舎」代表の宝槻泰伸(ほうつき・やすのぶ)さんと、Yohanaスペシャリストの野村さんが、長期休暇におすすめしたい体験についてお話しします。

【PROFILE】
宝槻泰伸(ほうつきやすのぶ)

京都大学経済学部卒。幼少期から、「探究心に火がつけば、子どもは自ら学び始める」をモットーにした父親に型破りな教育を受け、高校中退後に京大進学という特異な経歴を持つ。“子どもの知的好奇心に火をつける” 「探究学舎」の代表を務め、子どもの興味が広がる授業を独自に制作。東京・三鷹の教室を運営しながら、全国での出張授業や講演を通じて、探究学習を伝えている。
野村
Yohanaのスペシャリスト。お客さまの要望や相談に合わせて、さまざまな調べごとやサポート、予約・手配などを手がける。自身も2人の子どもを育て、中学受験を経験したキャリアを活かし、教育関係のリサーチや、コミュニケーションを得意とする。


長期休暇は、子どもの「意欲」を引き出す良いタイミング

野村さん(以下、野村):
長期休暇に、学校外の場で子どもに学びの機会を作りたいと思う方は多いですよね。お客さまからも、おすすめのイベントやスポットを教えてほしいとよくご相談を受けます。そして、その中で「探究学舎」に興味を持っている方がじつはとても多いんです。宝槻さんは、どんな経緯で始められたんでしょうか?

宝槻さん(以下、宝槻):
私自身、子ども時代に高校がつまらなくて中退した過去があります。当時は進学校に通っていたのですが、興味のないことを「勉強しろ」と強いられるのがとても辛かったんですね。学ぶことは、言われてするものではなくて、自発的に学びたいという意欲から生まれるもの。そんな認識が当時の教育現場にはなかったので、自分で作れたらと思い、立ち上げました。

探究学舎の授業のひみつや、自身が父親から受けた教育法について書いた書籍など、著書も多数

野村:
「学ばない教室」というと想像がつかないのですが、実際、どんな授業をやっているのですか?

宝槻:
宇宙や生命のことから、元素、数学、歴史、芸術、IT、スポーツまで、幅広い学問を「体験する機会」を提供しています。たとえば芸術なら観劇の体験、スポーツなら野球を観る体験のように、好奇心を育むきっかけになるような強い原体験を、探究学舎というひとつの場で、さまざまに提供しています。いわば、子どもの興味をできるだけ効率的に引き出すためのショートカットのような役割です。

野村:
幅広い機会を与えることは、やはり大切だとお考えなんですね。お客さまにも、できるだけたくさんの経験を子どもに積ませたいと考えている方は多いです。けれど、物理的に親が費やせる時間や手間は限られるもの。私たちは代わりにサーチを行うことで、少しでもお手伝いになればと考えています。

宝槻:
私たち探究学舎の役割は、あくまで子どもの興味を引き出す "入り口づくり" 。なので、そこから生まれた興味の芽をより深い探究心に結びつけるためには、子どもが打ち込める「何か」を大人が一緒に見つけてあげることが重要です。

その点で長期休暇は、子どもだけでなく大人にも時間の余裕ができるので、新しい「学びの機会」を探すのに良いタイミング。親子で一緒に体験できるサマープログラムなど、連休だからこそ、子どもと一緒に参加できるイベントを探してみるのも良いかもしれませんね。

将来につながる経験は、学校では学べないところにある

野村:
お客さまの傾向として感じるのは、自分の子どもに、できるだけ幅広い分野に興味を広げて欲しいと考えている方が多いことです。なので私たちも、何かをおすすめする際は、できるだけ幅広い視点からの提案を意識しています。

例えば、以前「幾何学が好きな子どもに、何か学びになる教材を与えたい」というご依頼があったのですが、通常なら化学系の読み物を提案しがちなところを、あえて幾何学模様をテーマにしたアートの本を提案してみたんですね。これは意外な視点だったようで、とても喜んでいただけました。

そうやってひとつの興味が、何か新しいほかの興味に広がるような提案をしていきたいと考えています。

宝槻:
親の希望は、狭く深くよりも、広く深くの傾向にありますよね。ただ、幅広い分野の学びを提供するとしたら、その分、大人にとって専門外な部分も増えるわけなので、自分だけで調べるよりも、詳しい専門家やプロに依頼できる方が効率的です。

子育てに関するアウトソーシングには、抵抗を感じる方も多いかもしれませんが、誰かに頼むということも学びのためには前向きな手段。Yohanaさんにリサーチをアウトソーシングすることもその一案だと感じます。

野村:
宝槻さんは「学校では教えてもらえないこと」ってどんなことだとお考えですか? やはりお客さまからも、学校では学べない体験を求める声がとても多いんです。

人生を縦軸(ライフロング)と横軸(ライフワイド)で捉えたら、『ライフワイド』に関わる部分だと考えています。

例えば、学校では試験勉強に合格するための知識は教えてくれますが、絵を描いたり、楽器を弾いたり、スポーツをすることの “喜び” の部分は教えてくれませんよね。でも、子どもたちにとって本当に必要なのは、何かの「やり方」ではなくて、それが「楽しい」と感じられる体験。それこそが将来やりたいと思う仕事、好きなことに直結するものだと思うんです。

学校での学びが「ライフロング」(進学)に必要なものだとしたら、その周辺にある豊かな体験を、私たちは「ライフワイド」(人生の可能性)に必要なものだと捉えていて。探究学舎が教えていきたいのも、その部分です。

長期休暇中の体験も、まさにライフワイドの充実に必要なことですね。


そんな「学校では学べないこと」を提供できる体験について。今回は子どものタイプ別に、おすすめのアイデアを伺いました。

「運動好き」な子どもへのアプローチ

野村:
運動好きな子どもには、今までに体験したことのないスポーツが楽しめる施設を提案することで、新しい興味が広がるきっかけになればと考えています。例えば「クライミングウォール」のような、日常ではなかなか体験できない非日常なスポーツが体験できる場所はおすすめです。

長期休暇なら、普段より少し足を伸ばしたお出かけもできます。例えば、都内在住のお客さまには北関東のスポットを紹介することも。
『佐野市こどもの国』のような複合遊具の充実した施設は、異年齢の兄弟がいる家庭でも幅広く楽しめます。

佐野市こどもの国(栃木県佐野市堀米町579)」

野村:
それから、あえて体を動かす以外の体験を進めることもあります。運動を題材にした書籍や映画など、スポーツの好きな子が興味を持ちそうなテーマの中で文化的な提案をすると、また新鮮味があって、喜んでいただけますね。

宝槻:
スポーツが好きならスポーツ選手にも興味があるはずなので、名選手の偉人伝を勧めてみるのもいいかもしれませんね。例えば、過去にNHKで「ミラクルボディー」という番組が放送されていました。オリンピックなどで活躍するトップアスリートのパフォーマンスの秘密を科学で解明するドキュメンタリーなんですが、子どもも大人も純粋に好奇心が刺激される内容でした。(現在は「NHKオンデマンド」で配信)

それから、スポーツ史など、歴史の方へ興味を広げても面白いかもしれません。そうやって連想ゲーム感覚で、子どもの気持ちの矛先を少しずつ別の分野に広げていくことが、新たな興味獲得につながります。

「知識欲が強い」子どもへのアプローチ

野村:
特に最近、ご依頼の中でも増えてきているのは「プログラミング教室」のリサーチです。小学校の授業で必修化されたこともあり、需要は多いですね。プログラミングには、探究心や学びたい・知りたい意欲を生かせる要素が詰まっているので、個人的にもおすすめの体験だと感じています。

あそぶ!天才プログラミングの学校 ©︎ チームラボ

野村:
チームラボが主催するプログラミング教室は、全国に教室があり、アクセスもしやすいためおすすめです。ただプログラミングを学べるだけでなく、自分が作ったキャラクターを、自分で動かしながら学べる楽しみがあって、より子どもの興味や好奇心を引き出しやすい構成です。

宝槻:
知識欲が強い子の中には、情報を得るのが好きな子と、考えるのが好きな子がいて、それぞれに合ったコミュニケーションの方法があると考えています。情報を体に入れるプロセス自体が好きな子には、できるだけ幅広い本や映画などのコンテンツを提供することが効果的です。年齢に合わせて、少しずつ高度なものをすすめていくチューニングも必要ですね。

考えることが好きな子には、プログラミング教室もひとつの手段ですし、他にはたとえばチェスや将棋などの頭脳系のゲームをすすめるのも一案ですね。戦術を検討するプロセスは、学校ではなかなか学べない「考える」体験につながります。

「工作やアートが好き」な子どもへのアプローチ

野村:
子どもが楽しめる美術館や展示などの提案はよくしていますが、やはり忙しい親御さんも多いので、インターネットを通じてアート体験を提供するサービスの需要も多いですね。

たとえば『どこでもアート』は、オンラインで絵画や工作が学べる通信教育サービス。

アートの中でも特定のジャンルに絞るのではなく、絵画も工作もバランスよく学べるカリキュラムなので、子どもの興味や可能性を絞らずに伸ばしてあげられるのが魅力だと感じています。画材など必要な道具も自宅に届けてくれるので、親が買い揃えてあげる必要もありません。

どこでもアート

ただ、「アート」はそれ自体が個々の感性に左右されるものなので、ストライクポイントを見つけるのが難しく感じていて。私たち自身も提案をしながらも特に迷うジャンルです。

宝槻:
視点を変えて、大人自身が興味を持てることを提案する、という考え方でも良いのではないでしょうか。

探究学舎でも建築・絵画・音楽の3ジャンルでプログラムを提供していますが、例えば音楽編ならば「何百年も愛され続ける名曲を作り上げたバッハやモーツァルトって、一体どんな人だったんだろう?」とか。建築なら「ガウディやコルビジェは、どんな工夫で名建築を作り出してきたのか」とか。大人でも知らないような「人」にフォーカスした内容にすることで、新たな好奇心を引き出しています。大人自身が興味を持てば、週末に展覧会へ行ってみようとか、コンサートを聴きに行ってみようとか、具体的なアクションのアイデアもより生まれてくるはずです。

「自然が好き」な子どもへのアプローチ

野村:
首都圏在住のお客さまが多いので、都会育ちの子どもに「本物」を見せてあげたい、触れさせたいという希望は多いですね。

中でも意識しているのは、自然体験だけではない、プラスアルファの要素があること。例えば、『プレーパークせたがや』は、世田谷区内のいくつかの拠点において、行政と地域住民が協働して運営する公的な「遊び場」で、木登りや水浴びなど子どもたちが自然を利用して自由に遊べる空間なのですが、そこでは子どもの遊びをのびのびとサポートする大人(プレーワーカー)の存在も魅力のひとつなんです。

そのように、子どもにとって印象的な何かを残せるプログラムを提案したいと考えています。

NPO法人 プレーパークせたがや

宝槻:
ただ自然の中に連れて行くだけで、自然に興味を持つ子にするというのはなかなか難しいことですもんね。満点の星空を見せるとか、出会ったことのない規模の自然に触れさせるとか。劇的な体験を提供できることが、子どもの探究心を引き出すためには必要だと考えています。

この間、息子をつれて屋久島の原生林を見に行ったのですが、あれだけ深い森に入っていくことは、なかなか味わえない自然体験でした。子どもにとってはもちろん、どうせならそのくらい本気の自然を体験できた方が、大人も楽しめる。

そうやって「大人が一緒に楽しむこと」も、その体験が子どもの記憶に残る大切な要素だと捉えています。

長期休暇は、せっかくだから大人自身も一緒に体験できる自然プログラムを、ぜひ探してみてほしいですね。


大事なのは、子どもの「好奇心の芽」に気づくこと

野村:
宝槻さんにお話を聞いて、できるだけ幅広く、さまざまな機会を提供してあげることが大切だと改めて感じました。その上で、子どもの好奇心の芽に気づき、引き出してあげることも、大人の役割ですね。宝槻さん自身は子どもと向き合う中で、どんなふうに「気づいて」いるのでしょうか?

宝槻:
まずわかりやすい方法としては、体験のあとに、子どもに感想を聞いてみること。何が楽しかったのか、具体的な言葉がいくつも出てくるようならば、好奇心が芽生えている証拠だと思います。あとは表情や、喋る時の熱量からも感じ取れますね。

ただ、シグナルも子どもによってそれぞれ。一見リアクションが薄くても、時間をかけてじっくり好きになっていくパターンもあります。すぐに反応がでなくても、根気よく、長期的な目で様子を見守ってあげることも必要です。

今の種まきは、いつかの人生にかならず繋がる

野村:
その中でやっぱり「これは向いてなさそうだな」となった時の、やめどきも難しいですよね。続けさせてみるか、潔く諦めるか。見極めに悩む方はとても多いと感じるんですが、宝槻さんはどう考えていますか?

宝槻:
これも難しいテーマですね。やはり子どもによって、諦めどきはさまざまで、正解はありません。ただ一つだけ言えるのは、長期的に見たら、決して無駄な種まきはないんじゃないかということです。

私は幼い頃に母の意向で茶道を習っていて、当時はまったく好きじゃなかったんです。でも、大人になってから武道の世界に興味を持ったり、歌舞伎や能のような日本の伝統文化が好きになったりと、その時の経験が今になって生きていることを感じます。

極端な話、大人になるまで、いつどこで芽が出るかわからないもの。だから私自身も親として、その「いつか」を信じて種をまき続けることが必要なんだと考えています。

子どもの学びに関しては、特に「コネクティングドット(点と点がつながるように、過去の経験が思いがけない場所で生きることがある)」の考え方が必要です。そう捉えると、大人ももう少し気張らずに向き合っていけるのではないでしょうか。

野村:
そう言っていただけると、なんだか背中を押してもらえる気がします。私自身もコネクティングドットを意識して、これからも広い視野で、お客さまに提案をしていきたいと思いました。


Yohanaなら、「子どもの学び」を見つける先までサポートいたします

・学びや体験サービス・スポットの空き情報の確認や予約。
・ご家族のスケジュールに合わせた、お子さまの習い事のリサーチ。
好奇心に合った学びの形、おすすめの体験、くらしへの取り入れ方までご家庭の状況に合わせてお手伝いします。

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こんなとき、Yohanaに頼って!【基本編】をご覧ください。

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