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「友人たちとゆるやかに繋がり、子育てを"楽しむ"ことを大切に」 谷尻直子さん

料理家として、レストラン〈HITOTEMA〉を主宰したり、クッキングを中心としたオンライン・オフラインでのサロンの開催やサプリメントの開発に携わったりなど、食を軸にした多彩な活動を展開する谷尻直子さん。私生活では、夫で建築家の誠さんと9歳の息子さんと、3人家族でくらしています。多忙な日々の中ではさまざまな壁にも直面してきたという谷尻さんが辿り着いたのは、生活を"楽しむ"こと。家族同士はもちろん、友人家族と助け合い、さまざまなサービスや手段に頼ったりしながら、絶えず自分や家族にとっての心地良いくらしを模索する彼女を訪ねました。

「あの人の気持ちよい生き方」は、子育てや家事、仕事などに忙しい日々の中で、思い思いの方法で頼り、支え合い、豊かに生きる方々を紹介する連載企画です。


仕事や家事と上手に向き合いながら、
子どもとの時間を第一に。

「今くらしの中で最も大切にしているのは、息子との時間ですね」。そう話す谷尻直子さん。料理家として精力的に仕事をこなす一方で、忙しくても朝は必ず一緒に食卓を囲み、平日の仕事は17時半までに切り上げるよう心がけています。また、時には家事代行などの民間サービスを利用しながら、限られた時間のなかで仕事、家事をこなし、子育てとのバランスをとっているそうです。

「今息子は9歳で、以前と比べて親の手を離れ、友人との関わりの比重が大きくなっている段階です。親子で思いっきり一緒に時間を過ごせるのも残りわずかなのかなと。だから、仕事を多少セーブしたり、時折家事代行サービスなどにアウトソースしたりしながら、息子との思い出をたくさん作るように心がけています

ともにキッチンに立ってサンドイッチを作ったり、ミルクティーを囲んでおしゃべりをしたり、自宅カラオケを楽しんだり。さまざまな楽しみを見つけて時間を過ごす谷尻親子。なかでも2人にとって大切なのが、週に一度、一緒に通っている書道の習い事です。「最初は息子に習わせようと見学に行ったんですが、私自身も昔習っていたこともあり、やりたくなってしまって(笑)」と谷尻さん。親子並んで参加するのは2人だけですが、真横にいることで普段は見えない部分も見えてくるのだとか。

「小学校に行っている間と違って、書道教室では叱られているときも、褒められているときも一緒にいられるんですよね。叱られているところは"分かる、分かる"と思うし(笑)、褒められているときは、先生と一緒に全力で褒められる。経験を共有できるのが嬉しいです」

一方、教室の中では母も等しく学ぶ側。谷尻さん自身が先生から字を直してもらう際には「母も完璧ではないんだと息子に伝えられるのも醍醐味」だそう。大人であろうと子どもであろうと、継続することや集中することが成長につながるのだと、身をもって伝えられることに魅力を感じているといいます。

SNSを起点にしたつながりが、
子育ての"駆け込み寺"に。

ご自身もとことん楽しみながら息子さんと向き合う谷尻さんですが、子育ては誰にとっても初めての連続。特に保育園に通っていた頃は、同じ園に通うママ友との横のつながりも少なく、「こんな時どうしたらいいんだろう」と悩んで立ち止まってしまうことも多かったといいます。そこで思いついたのが、SNSを通じて同じように子育てに向き合うママたちと意見交換をするアイデアでした。

「instagramで『ママトークをしませんか?』と呼びかけて。意見交換をしたり、そこで知り合った方々に実際に〈HITOTEMA〉のお店に来てもらってコミュニティサロンを行ったりもしましたね。トークテーマは『子どもと過ごして、思いっきり楽しめた場所は?』『子どもと一緒に行った旅行先でオススメの場所は?』などさまざま。ちょっとしたコツや工夫を共有し合っていました」

一度つながった人との関係性を大切にするところも谷尻さんならでは。息子さんが小学校に通うようになった今も、保育園時代にSNSを通じて知り合ったママ友たちとのコミュニティが「自分一人ではドツボにハマってしまうような子育ての悩みを気軽に相談できる"駆け込み寺"になっている」といいます。また、趣味を共有する家族同士の関わりが、子育ての助けになることも。

「私と夫はスノーボードが、息子はスキーが好きで、冬になるとしょっちゅう長野や新潟、北海道などにあるゲレンデに出かけます。その時には、同じくらいの年齢の子どもがいる各地の友達を誘って、現地集合現地解散で一緒に遊ぶことも多いですね。その際にオススメの絵本を贈り合ったり、子どもと一緒に家族で楽しめるボードゲームを教えてもらったり、さまざまな情報交換の機会になっています」

友人家族と、趣味を通じて楽しい時間を共有することによって、いつのまにか気軽に子育てにまつわる情報交換ができる間柄になったという谷尻さん。家族ぐるみで時間を過ごすことが、我が子を理解することにも一役買っているのだそう。

友人が親目線とは異なる視点で息子を見てくれるので、私自身勉強になることが多くて。立体的かつ多面的に我が子を捉えることができるようになるので、子育てにも生かされています」

家族の幸せは、
家族全員が笑顔でいてこそ。

楽しむことを大切にしながら周囲と積極的に交流を持ち、頼り合うことで子育てを進めていくのが谷尻さん流。しかし現在のようなすこやかな子育ての方法に辿り着くまでには、持ち前の責任感ゆえに無理をしすぎて、倒れてしまった経験もあったという。

「息子が0歳の頃、夫は出張で各地を飛び回っていて忙しく、ほぼワンオペ状態で家事と子育てに当たっていました。お店もほぼ一人で回していたため、ある日限界がきてしまって。しばらく療養しました」

頼ることで、相手に迷惑をかけてしまうんじゃないかーー。当初はそう思っていたそうですが、抱え込みすぎてダウンしてしまった経験から、考えを改めるきっかけをもらったといいます。

「冷静に考えれば、私自身が人から頼られて迷惑だなと思った経験はひとつもないんですよね。家族にとっては、3人ともが心身ともにすこやかでいられる状態が一番。誰か一人が負担を背負い込んで鬱屈としてしまうと、とたんに家族の雰囲気も悪くなってしまうものです。人に頼ったり、いろんな手段を使ったりすることで、家族みんなが笑顔でいられる方法を模索したいなと」

以来、自分が元気にいられるのが大前提だと思い至った谷尻さんは、「何をしたら自分が喜ぶか、自分自身に問うようにしている」のだそう。今では、疲れた日の晩御飯は、無理して作らずお惣菜を買って帰ったり、家の掃除に手が回らない時は家事代行サービスに頼ったりすることもよくあるといいます。さらに、コロナ禍に入ってリモートワークが一般化された状況を受け、夫婦間でもうまく家事や子育ての分担ができるよう、夫の誠さんにある提案をしました。

「私が提案して、毎週水曜日は夫に息子を見てもらう日にしてもらいました。明確に曜日を決めておくことで、私は自分の予定を組みやすくなったし、夫も子どもと密に関わることで成長をリアルに感じられるようになった。子育てに積極的になってくれたことは嬉しい変化でした。夫はあまり料理が得意ではないんですが、私がnoteで公開しているレシピを見ながら頑張ってくれて、今ではガパオライスやパエリアなどを作って息子に食べさせてくれているみたいです」

悩みを共有することが、
頼り合える関係性の種になる。

「悩みは、少しくらいあった方が人生は豊かになると思う」と谷尻さん。悩みがあることで家族と向き合ったり、周囲の人とコミュニケーションを取ったりするきっかけにもなるもの。ゆえに「悩みを無理につぶそうとせず、ありのままに肯定して、周囲に共有することが、頼り/頼られる関係性を築くことにつながると思います」。

とはいえ、まだまだ頼ることに消極的になり、仕事と、家事や子育てとの両立に壁を感じる女性たちも少なくありません。「感性が鋭い女性たちが作るサービスやプロダクトは魅力的。だからこそみんながもっと活躍できる社会になれば」と谷尻さんは話します。

女性たちがもっとクリエイティブな方向に時間を使えるようにすることは、社会にとっても有益だと思うんです。だからこそ、人に頼るのみならず、家事や子育てをサポートする民間サービスを生活に取り入れるのは有効だと思います。"贅沢なんじゃないか"と尻込みしてしまう人も多いですが、そこは、パートナー側が気づいて、プレゼントしてあげるのも一つの手ですよね。日々をすこやかに楽しく送れる方法を、家族単位で考えていけるといいなと思います」

仕事、家事、子育てと忙しい日々を送りながら、家族全員が笑顔でいられるための最適な方法を模索し続ける谷尻さん。友人たちとゆるやかに関わりながら、生活を楽しむために創意工夫を凝らす谷尻家のスタイルは、共働きの選択が増えてきた今の時代における、家族のすこやかなあり方を体現していました。

【PROFILE】
谷尻直子
たにじり・なおこ/1976年東京都生まれ。料理家、フードプランナー。ファッションのスタイリスト、ブランドのプロデュースなどを経て、料理家に。“現代のおふくろ料理”をコンセプトとした、東京・渋谷区の完全予約制レストラン〈HITOTEMA〉を主宰するほか、クッキングサロンの開催など食にまつわる幅広い活動を展開。著書に『HITOTEMAのひとてま』(主婦の友社)などがある。
https://www.instagram.com/naokotanijiri/

子育てや家事に日々忙しい生活を送るあなたに、
新しい「頼り方」の選択を。

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