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「家族や友人との"頼り合い"がもたらす、すこやかな子育て」 杉山愛さん・走さん夫妻

プロテニスプレーヤーとして17年間の現役生活を全うし、引退後は解説者やテニス指導者、そして女子テニスの日本代表監督などとして活躍を続ける杉山愛さん。40代での2度の出産を経験しながら、多岐にわたる仕事に取り組む上では、夫でありマネージャーでもある走さんと、公私ともに絶えず手を携えてきました。その背景にあるのは、互いに密なコミュニケーションをとること、そして周囲に積極的に"ヘルプ"を出すことなのだそう。二人のくらしぶりには、心身ともにすこやかに生きていくためのたくさんのヒントが詰まっていました。

「あの人の気持ちよい生き方」は、子育てや家事、仕事などに忙しい日々の中で、思い思いの方法で頼り、支え合い、豊かに生きる方々を紹介する連載企画です。


40代で2度の出産。妊娠中も子育ても二人三脚で。

神奈川県の湘南エリアに拠点を構え、8歳の息子さん、2歳の娘さんと、4人家族でくらす杉山夫妻。二人の朝は、小学校に通う息子さんのお弁当を作ることから始まります。担当は日によってさまざま。ルールを決めているわけではなく、状況に応じて声をかけ合いながら、家事や育児に向き合っているといいます。

「相手が疲れていそうだったら私がやるよと声をかけるし、逆に自分に余裕がなかったら、潔くお願いする。いい意味でお互いに甘えることで、自然と良いバランスで分担できていますね。でも、やってもらって当たり前ではなく、『ありがとう』と感謝の言葉をかけることは、お互いに常に大切にしていることです」(愛さん)

愛さんは、40歳で第一子を、そして46歳で第二子を出産。2度の高齢出産は心身ともに負荷が高かったそうですが、走さんと二人三脚で乗り越えながら、仕事と子育てを両立させてきました。その過程で彼らが大切にしてきたのは、"察する"ことではなく、自分の気持ちや今の状況をしっかりと"伝え合う"こと。それを象徴するのが、妊娠中に取り入れた「つわりメーター」という取り組みです。自分の心身の状態を10段階の数値で表す試みで、重いつわりに苦しむ愛さんに適切に寄り添うために、走さんが考案したコミュニケーション方法でした。

「辛そうに見えても意外と大丈夫だったり、逆に元気そうに見えて、実は動けないくらい辛かったり。当初は見た目の印象と実際に彼女が感じている辛さのギャップに戸惑いました。それである時ふと、『今の辛さを0〜10までの数値で表すといくつぐらい?』と聞いたことがあって。"3"ならお茶をしに出かけられるし、"8"なら家でゆっくりしよう、と。相手の主観を客観的な指標で見える化することで、コミュニケーションしやすくなったんですよね。それ以来、積極的に取り入れるようになりました」(走さん)

この方法は、愛さんにとっても効果的だったそうです。
「数値にすることで、自分の状態をうまく伝えられるようになりました。妊娠期に限らず、今も時々、子どもたちの体調を測りかねる時などに使っています」(愛さん)

曖昧さを削ぎ落とし、
自分の考えを、自分の口でしっかり伝える。

「つわりメーター」が生まれた背景からもうかがえるように、家族同士でも互いの心身の状態は見えづらいもの。曖昧なものを曖昧なままにするのではなく、しっかり自分で口にして伝えることが、杉山家のルールです。

「探り合うのってやっぱり大変。相手はどう思っているんだろう、どういう状態なんだろう、ってモヤモヤしている時間がもったいないし、はっきりと言葉で表したほうが誤解も少ないものですよね。それに自分の考えを口に出すことで、頭が整理されることもある。だから夫婦同士はもちろん、息子や、まだ2歳の娘にも、今のうちから『あれがほしい』や『これがしたい』などの自分の気持ちを、曖昧にせず自分の口でしっかり意思表示するように伝えています」(愛さん)

「我が家では、いつも誰かが自分の考えをぺちゃくちゃ喋っている」と二人は笑いますが、自分の気持ちを周囲に伝えるためには、前提として、自分自身としっかり向き合うことが大切です。そこには、現役時代に愛さんが乗り越えたスランプの経験が生きているのだと振り返ります。

「25歳の頃に大きなスランプを経験しました。それ以前は、結果が良ければ舞い上がるし、悪ければとことん落ち込む。その時々の感情に身を任せるタイプだったんですが、スランプに陥り自分をもう一度立て直そうと考えた時に、良いことも悪いことも、まずは自分自身のことを冷静に見つめる大切さに気づいたんです。スランプから抜け出せず1年以上悩んでいましたが、その気づきからガラッと人生が好転していった。そうやって培った自分と向き合う姿勢は、引退した今でもいい武器になっています。自分自身の気持ちを正しく理解して、伝えるべきことを相手に伝えれば、今抱えている課題の解決法も見つかるし、少しずつでも改善していけますからね」(愛さん)

頼るのと同じくらい、頼ってもらえる存在に。

仕事に子育てにとマルチタスクが求められる日々の中で、どうしても手が回らなくなった時、夫婦同士はもちろん、親や友人、そして仕事仲間に"ヘルプ"を要請するのも二人ならでは。いわば"チーム杉山"で子育てに向き合っています。

「息子の出産のタイミングで、アフリカから帰国して近所に越してきてくれた義母には日頃からサポートしてもらっていますし、私たちが運営するテニスクラブのスタッフに息子のお迎えや晩ごはんの用意をお願いすることもあります。また、仲良しのママ友やパパ友にも日頃から助けてもらっていて、娘を妊娠していてつわりがひどかった時には、息子を預けて、1日中遊んでもらったことも。日々いろんな場面で、積極的に周囲の手を借りるようにしていますね」(愛さん)

家族だけで閉じることなく、 チームで子育てに向き合うのは理想的な形です。しかし、気軽に頼れる相手がいなかったり、頼ること自体に苦手意識を持ってしまう人も少なくないのではないでしょうか。日頃から、周囲と密な関係性を築くためには「本音で付き合うことが大事」だと走さんは話します。

「子どもは夜何時頃に寝かしつけるのか、週末をどう過ごすかなど、いろんな考え方を持つ人がいます。特に家族ぐるみの付き合いの場合、相手家族のスタイルに無理に合わせようとしても、いつか不和が生じてしまうもの。あくまで本音で向き合うことで、くらしの中で大事にするものが近い家族がきっと見つかると思うんです。そういう方々と密な関係性を築ければ十分。自分たちが頼るのと同じくらい、頼ってもらえるようにも声をかけていて両者にとって心地良い関係を保つことを心がけています」(走さん)

まずは子どもとの時間を。
そしてゆくゆくは、二人の時間を大切に。

そしてもう一つ、「周囲に頼ることに対して、罪悪感を持たないことも大切
」と愛さん。

「特に責任感が強い方だと、子どもたちに申し訳なさを感じてしまう人もいると思うんです。でも私は、周囲に頼ることは、結果的に子どものためにもなるとも感じていて。常に私といるよりも、別の人と触れ合うことで面白い遊びを経験できたり、新しいコミュニティに飛び込むきっかけになったりもする。実際息子は友達づくりが上手になって、仕事の都合でテニスの試合会場に連れて行けば、親放ったらかしで、新しい友達を作ってしまうようにもなりました(笑)。今は、託児スペースやくらし回りを助けてくれるサービスも充実しているので、お金を払って手を借りるのもひとつの方法。助けてもらうのは、無責任なことではない。捉え方ひとつで気持ちが楽になると思いますよ」(愛さん)

絶えず密に話し合い、時に周囲の手を借りながら、子育てに仕事にと奮闘中の二人。今後の人生をどう考えているのでしょうか。

「直近では女子テニスの日本代表監督としての任期が続くので、引き続き力を注いでいきたいですが、まだ娘が2歳なこともあり、向こう20年ぐらいはやっぱり子育て中心の生活になるなと見込んでいます。息子は今テニスを熱心に頑張っているので、子どもとテニスを中心とした人生になるのかなって。もちろん、子育てと仕事の合間には、ディナーに出かけたり、旅行をしたりと、夫婦の時間も捻出していけたらなと思っています」(愛さん)

一方で走さんは、「僕は、子育てを終えた先にある二人だけの生活が待ち遠しいんですけどね」とも。あらゆる局面で手を携え、寄り添い続ける二人の関係性からは、すこやかな家族の形が垣間見えました。

【PROFILE】
杉山愛
すぎやま・あい/1975年神奈川県生まれ。パームインターナショナル・スポーツ・クラブ代表、BJK杯日本代表監督。プロテニスプレーヤーとして活躍し、現役時代は、日本人女性プレーヤー初の最高世界ランク、ダブルス1位を獲得。グランドスラムの連続出場62回の世界記録を樹立し、オリンピックには4度出場を果たした。2009年に現役引退。現在は後進の指導やメディア出演などで活躍中。
杉山走
すぎやま・そう/1981年アフリカ・ケニア生まれ、アメリカ育ち。プロゴルファーとして活躍したのち、アスリートのマネジメント業務に携わる。2014年から妻である杉山愛さんのマネージャーを務め、自身としてもテレビ出演や司会活動を行なっている。

子育てや家事に日々忙しい生活を送るあなたに、
新しい「頼り方」の選択を。

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